私にとって初めての東京マラソン、初めてのWorld Marathon Majorsの大会に参加する機会が2月23日にやってきました。東京マラソンは恐らく日本で最も参加権利を獲得する倍率が高いマラソン大会で今年も10倍強の倍率でした。幸運にも補充抽選で参加権を頂きこの日を迎える事が出来ました。
To get a slot for Tokyo Marathon is quite competitive and only one in ten applicants win the lottery. In my case, I was selected to fill the cancelled runners. A very lucky case, indeed. According to the announcement by the headquarter office, there were 37000 runners are listed for the race including handicapped runners.
主催者の説明によると3万7千人の参加者が登録し、東京都新宿区の都庁前をスタートする事になっていたようです。
新宿駅に到着したのはおよそ8時頃。
まだ、2月ですから朝のスタート前は寒さもかなり厳しく、上着などの荷物を預けてからはレース用の薄着になってしまいますから寒さ対策として体をこまめに動かしていました。とくに8時45分に指定されたブロックに整列させられてから9時10分の号砲を聞き、実際に隊列が動き出す9時15分頃までは、身動きもろくにとれないので本当に寒さに凍えました。
私が指定されたスタート待機エリアはH、スタートラインからは遥か遥か後方です。ワシントンホテルの前で角を曲がりこのあたりになります。この辺りで、MCの声を聞きながらスタートを待ちました。
話題の森喜朗元首相の挨拶や日本陸連会長の挨拶、国歌斉唱(周囲は、ほとんど歌っていませんでしたが私は熱唱しました。)
号砲を聞き、花火が鳴り響きましたが、隊列は微動だにしません。5分ほどしてようやくゆるゆると動き始めましたが、牛歩のように緩やかな歩みで少しずつ進みました。
ワシントンホテルの前を左折してもまだのろのろです。ただ、丁度まがり角の当たりにスタートライン付近のカメラ映像が投影されていて、そのあたりではちゃんと走っている姿が見られたので、間もなくだなぁということは良くわかりました。
スタートライン左手には大会役員の陣取る席が見えてきました。あんなところで座って眺めているくらいなら、こちらで走った方が遥かに楽しいに決まっています。可哀想に、、、。
そしてスタートライン右手には我々ランナーの門出を祝してくれる合唱団のおじさま達の姿が。合唱というのは多いに力を頂けるものだと改めて実感した次第です。
いよいよスタート。ここで、twitterで「スタート」と呟き、位置情報を発してみました。確かに、このあたりでの発信でした。
スタートから間もなくは団子状態と言われていたのですが、車線を広く確保して頂いてる事もあり、三井ビルを右に曲がるあたりからは、ストレス無く走る事が出来ました。すぐに右手にトイレが見え、なおかつ並んでいる人も居なかったのですが、まあ、大丈夫だろうと思い、通過しました。結論から申し上げれば、その後、どのトイレも10人を越える行列となっていましたから、寄るのであればここだったなぁと思います。不思議なもので、最初の頃は尿意のようなものがあったのですが、約5時間の走行を終えて、荷物を受け取り、自宅に戻るまで尿意は全くありませんでした。
この後、一切、自分で撮った写真はありません。
走る前に地図を見ていたときの印象では、コースは大きく分けて6つのエリアに分けられました。
1、新宿駅〜(靖国通り)〜(外堀通り)〜飯田橋(約6km)
2、飯田橋〜竹橋〜(内堀通り)〜日比谷(10km)〜三田〜品川(約15km)
3、品川〜三田〜内幸町(20km)〜日比谷〜銀座四丁目(約22km)
4、銀座四丁目〜日本橋〜茅場町〜水天宮(25km)〜浅草雷門(約28km)
5、浅草雷門〜浅草橋(約30km)〜水天宮〜茅場町〜日本橋〜銀座四丁目(約34km)
6、銀座四丁目〜築地本願寺(約35km)〜佃大橋〜朝潮大橋〜春海橋〜豊洲〜東雲一丁目(約40km)〜有明〜東京ビックサイト(42.195km)
作戦としてはとにかく前半からペースを抑えて走ろうという一点でした。理想としては半分を終えた最初の銀座辺りで、これからハーフマラソンを始めるのだ!と思えるくらいの余裕を感じられる事でした。目標時間は4時間45分。Garmin 910XTのvirtual runnerはキロ当たり6分38秒ペースに設定し、仮想敵は4時間40分でゴールするように設定しました。
実際に走ってみると、1、はあっという間でした。東京マラソンという空気に呑まれたままペースを抑える事だけに専念し走っているうちにあっという間に飯田橋の交差点を迎えました。
2、のコースのうち飯田橋、竹橋間は初めての走路でしたが、それ以降は何度となく走っているなじみの景色でしたのでようやく落ち着きを取り戻せた感じでした。このペースで苦痛無くいければいいなという思いでした。
3、のコースも直前に自分で試走をしたルートだったのでまあ落ち着いていました。沿道で同じトライアスロンチームの仲間からの声援も貰いました。
4、は年末に一度だけ試走をしたコースでしたが、折り返してくる速い選手を見て、「あぁ、自分もこのまま向こう側を走れたら楽だろうなぁ。。。」と思うくらいには疲労が蓄積していました。ベースは維持していましたが、余裕はありませんでした。
5、折り返しのコースは未体験でしたが、あまり長さは感じませんでした。ただ、確実に疲労は蓄積し、「歩きたい」という思いがどんどん膨らみました。ドリンクを提供するエイドのほかに、フードエイドが出現し始め、つい飲食の間は歩いてしまい始めたのもこのあたりでした。
6、銀座四丁目を過ぎてからは地獄の長さでした。果てしなく感じられました。ただ、後からタイムを眺めてみると、佃大橋を越えた当たりからは、遅いなりにも走りを持続出来ていたことが分かり、結果論ではありますが、もう少し、自分の気持ち次第では何とか出来たのではないかという思いもあります。つまり、気持ちが負けていた最後の7kmでした。
大会主催者から提供された5kmごとのペースは以下の通りでした。
0−10km 1'06"56
10−20km 2'13"19 (1'06"24)
20−30km 3'21"12 (1'07"57)
と30kmまでは、ほぼ予定通りの良いペースで走ることが出来ていた事が伺えます。ただ、実際には28kmあたりから疲労が出て来て、エイドの度に飲食物をつまんではペースダウンを繰り返しており、25−30kmでペースは落ち始めています。その後は明らかにペースが落ちていて、特に銀座を過ぎ、佃大橋から先が本当に長く感じられました。
計算してみると、30-42kmは4'51"56 (1'30"44)と大幅にペースダウンしており、1kmに7分30秒を要していました。
昨年走った人生初のマラソン、Albany Marathon (Georgia, USA)では、長時間歩いてしまった部分があったのにタイムは4'48"58でした。今回は基本的には最初から最後まで走り続ける事が出来、そこは収穫であったと考えていますが、タイムは3分ほど負けてしまいました。では、何故前回よりゴールタイムが遅かったのか、、、やはり、30km前後からの弱気の虫が原因と思われます。
次は、最後まで気持ちを維持して、再度ベストタイムの更新に挑戦したいと思いますが、それでも完走は嬉しいものでした。
東京マラソン当選の経緯
ご存知の通り、東京マラソンは3万7千人のランナーの実に十倍以上の応募者から選ばれます。単純に計算すると、10年に一度の幸運なわけですから、二回目の応募となる第八回で走る事が出来た私は極めて運が良いという事になります。
ただ、私の周りを見ていると、一度走った事がある人は、二度、三度と当選を重ねる人も多く、どうも当選、落選に一定のバイアスが掛かっているようにも見受けられます。
また、どうしても走りたい事情がある人には、大会に向けて10万円以上の寄付を行う事で何らかのメッセージとともに走る事が出来ます。この規定を利用して走った知人、友人、有名人はけっこういるようです。
今回、私が当選の通知を貰ったのは昨年の10月19日、実は周りの人たちよりも随分遅い吉報でした。これは、一般の抽選、当選者の申し込みが終了し、キャンセルした当選者分について行われる補充抽選の当選だったからです。青天の霹靂でしたが、こんな形の当選があるのも、One Tokyoなる東京マラソン支援者団体に登録していたお陰でした。
すっかり落選だと思っていたため、2月のマラソンは愛媛松山マラソン、熊本城マラソンにそれぞれ抽選申し込みを済ませていました。残念ながらひと月に二回、三回も走る足は持っていませんので、今回は両大会への参加は辞退させて頂きました。
マラソナーへの道のり
現在42歳になりますが、昔から走るのが大好きだったわけではなく、人生の大半は「走るのが大嫌い」でした。私がマラソン大会に初めて参加したのは2011年にふとしたきっかけでトライアスロンを志し、自分がいかに走れないかを思い知らされたからでした。それがきっかけで申し込んだ初めての大会が2012年1月の新春喜多マラソン10kmの部でした。高校時代のロードレース大会が死ぬほどいやだったのに、走り始めてからも後悔し通しで走りは無惨でしたが、走り終えた爽快感をこの時に初めて知りました。
その後、2012年10月にタートルマラソンで初めてのハーフマラソンを完走し、11月の十勝帯広ハーフ、12月に板橋シティハーフ、足立フレンドリーハーフ、年が明けて昨年1月の谷川真理ハーフまで5つのハーフマラソンを走り、そのうち二つ、板橋と足立で2時間を切る目標を達成出来ました。
いよいよ、フルへの挑戦をと思った矢先に突然の腰痛再発に悩まされ、初フルの予定であった2013年2月の熊本城マラソンは泣く泣く断念しましたが、2013年3月アメリカジョージア州の学会先近くの町Albanyで行われたAlbany Marathonで人生初のフルマラソンを完走しました。この時のタイムは4時間48分58秒でした。このときマラソン完走者をMarathonerとたたえてくれる事を初めて知りました。
しかし、2013年は通常業務や家庭内の業務、面倒が忙しく、参加を予定していたトライアスロン大会もことごとく断念し、トレーニング量自体が半減しました。調子が良い頃には82−3kgまで減少した体重もジワジワとリバウンドし、2013年唯一参加した8月のSanta Barbara Triathlonの頃は87−8kgまで増加していました。その後も増加を続け、年末には90kg台のかなりのところまで増加していたと思われます。
東京マラソンへ向けての準備
そんな状態でしたから当選が決まった10月からは、体を故障させる事無く、少しずつ体重を落としつつ、走り続ける事を心がけました。一昨年最も走っていた時期は月に150kmオーバーで走れていたのですが、まずは毎月100kmをノルマとして設定しました。
体重が重い分、同じ程度の負荷でもスピードは上がりません。それでも無理はせず、かといって休みすぎず、長期間のブランクをなるべく作らないように走りました。年末年始には、東京マラソンのルートの一部である品川〜浅草間を走破してみたりもしました。
実践練習として、1月には1年ぶりになるハーフマラソン、フロストバイトロードレースに参加し、こわごわながらハーフマラソンを完走しました。2時間を大幅に越えるタイムでしたが、最後まで走りきるだけの足は残っていた事に感謝しました。
2月9日には赤羽ハーフでフルマラソンの前半部分の予行をしようと思っていたのですが残念ながら大雪の為中止。直近二回の週末が雪のため走れなかった事は予想外でした。それでも、2月だけで70kmほど走り込んで大会に臨めたのは、大会三週間前から始めたNike plusというapplicationの中にいる(鬼)Coachの指導のお陰でした。このコーチ、なかなか厳しくて、大会までの三週間、今日は何キロ走れ!今日はこういうペースで何キロ走れ!とやかましく指示してきました。全部言う通りに出来た訳ではありませんが、励みにはなりました。
果たしてTokyo Marathon当日の体重は89kgでした。何とかフルを走れる最高限度までは絞れたかなぁと感じられました。それでも随分重たいのは事実ですが、、、
東京マラソン選手登録、東京マラソンEXPO
東京マラソンの選手登録は、大会の3日前から、木金土の三日間、ゴール会場となる東京ビッグサイトで行われました。
photo IDにより本人確認されます。東京マラソンで代理出走は出来ません。
一貫して手続きはきわめてスムースです。皆さん丁寧に応対して下さり本当に心が和みました。
ゼッケンと靴に取り付けてタイムを測定してくれるランナーズチップを受け取りました。
東京都庁をスタートしてからの景色がパネルになって展示されています。
2007年の第一回からのポスターとメダルが飾られていました。
上位三名に送られるメダルは、金、銀、銅で輝いています。同じ形のメダルを完走すると頂ける事になっています。
記念のTシャツも大会前に頂きました。
走行するコースをムービーで紹介してくれるブースは大変参考になりました。ガイドのお姉さんもとてもチャーミングで、つい、ムービーではなくそちらに見とれてしまいそうになります。
実は、このお姉さんのコース紹介の先には延々と模擬店が軒を連ねており、もう少し時間をかけて見て回りたかったのですが、残念ながら閉店のお時間と成ってしまいました。もし、次があるとするならば、数時間の余裕を持って来場したいと思います。
走ってみて気がついた事、次があれば改善したい事
1、食事 food and hydration
空腹、ハンガーノックだけは避けたいところでした。90kgの体型で5時間弱を走るとなると、それだけで4000kcalを越えるエネルギー消費となります。通常、ハーフマラソンでも2時間近く走っていると確実に筋肉内に貯蔵していたグリコーゲンの枯渇とちょっとしたこわばり、痺れを自覚します。ましてやその二倍以上の時間を走り続けるフルマラソンですから、事前の食事とレース中の補給は気を使いました。
ランナー向けの書籍や運動生理学の書籍を読むと、エネルギーが枯渇して走れない状態をハンガーノックと呼んでいます。ハンガーノックにならないために事前に十分なエネルギー摂取をしておくことは勿論ですが、レース中にいかにエネルギーを補給できるかがレースが長時間に及べば及ぶほど重要になります。
朝はスタート3時間前からの飲食で、切り餅を6個、トースト、その他を食べ、トータルでover 1000kcalの朝食をとりました。着替えて、トイレを済ませて、移動中もバナナ二本、ヴィダーインゼリー、ポカリスエットを断続的に摂り、起床後に1500kcalは摂ったと思います。
餅はトライアスロン仲間の推奨もあり、以前のトライアスロンの時から導入し、その効果を実感したのですが、餅を食べておくと激しい空腹感やハンガーノックになりにくいようで、実際、今回のレースでもハンガーノックを疑わせる症状はありませんでした。それでも、レース前半からおよそ5kmごとに栄養剤のパックを摂取し、27km以降のエイドで食べ物が並び始めてからは、バナナ、トマトなどを頂きました。
また、沿道で応援して下さっている観衆の皆さんによるエイドで、チョコ、おにぎり、レモン、オレンジ、コーラなどを頂きました。食べ物、飲み物は勿論力になりましたが、私財と時間を投じて下さっていた事に感謝の気持ちでいっぱいになりました。
沿道の施設エイドの中で最も有効だったのは蜂蜜漬けレモンとコーラでした。
2、装い running wear
今回、朝の気温は3度、日中最高10度まで上がると予想されていたので、寒くて困る事は無く、むしろ厚着にならないように心がけました。トライアスロン用のトライトップは、我らがイオマーレのピンクの水玉で、その下にNikeの密着型高吸湿性のメッシュ半袖を着用、下はランニングタイツにしました。
とはいえスタートの時点では、号砲を待つ間かなりの寒さが予想されましたので、ネックウォーマーとビニールのポンチョを着用し、走り始めて体が温まったところで廃棄しました。結果的には寒さに凍える事も無く、汗だくにもならず良い選択でした。
ただ、今回の上下の組み合わせはポケットが少なく、途中で摂取する栄養剤や塩タブレット、iPhoneを入れるポケットが足りません。そこで私は両手袋の中に栄養剤と塩タブレットの袋を忍ばせました。補給したい時にすぐに口にでき、存外に快適でした。
結果的にiPhoneは持ち歩く必要はなかったので、荷物の中に入れて預ければ良かったのですが、iPhoneはウエストポーチに入れました。残念な事に、走っている間にチャックにビニール素材を挟み込み、開け閉めがほとんど出来なくなりました。ですので、レース中に一枚も写真を撮る事が出来ませんでした。
3、ペース pacing
実は、今回6"38/kmのペース設定はそれほど間違っていなかったように思います。ただ、比較的余力があった前半に、出来る事ならば貯金を作ろうという邪心が邪魔をしました。6"38を切れなければ切れないでよし!と思うか、始めから2秒遅めの6"40〜45/kmで設定しておき、6"38で走れれば貯金となるペースにしておくか、が良かったように思います。
もう一つ、自分が設定したペースを維持出来なくなると、とたんに弱気になり、もうだめだーと思いがちなのですが、決してそんな事は無く、その時はスッキリと気持ちを切り替えて、維持出来そうなペースを改めて自分なりに設定し、走れば良いのだという事を、今回、レースを終えてから気がつきました。つまり、ダメだーと思っていてもゴール近くでのタイムを見る限り完全に力が尽きているのではなく、実際には体力的にはまだ走る事が出来たからです。
総括すると
10年に一度の幸運に恵まれ、初めて走る事が出来た東京マラソンですが、想像していた以上に素晴らしい大会であり、今回のレースは私にとって一生の思い出に残るレースであると思います。10年後、20年後になるか分かりませんが、年齢を重ねてまたチャレンジ出来る日が来る事を心より願って止みません。
また、当選しなかった場合でも、医師という職業にある以上、それを生かしたボランティアランナーとしても参加出来る事を願っています。
今回の東京マラソンを完走したことで、大いなる野望として、夢として、東京以外のWorld Marathon Majorsへの挑戦意欲がわいてきました。Bostonなどは極めて参加のハードルは高く、実現も難しいかも知れませんが、比較的参加のハードルが比較的低い大会から、一つでも、二つでも挑戦できればと思います。
おまけ
東京マラソンには、マラソンを愛するコスプレランナーが数多く参加します。皆さん趣向を凝らした衣装で走るのですが、私が所属するトライアスロンチームには野菜、果物で走るのが大好きな仲間がたくさんいます。一人でも目立ちますが、大勢で集まるとさらに注目を集め、今回はWall Street Journalにも掲載されました。
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