2004年になると、別の視点からの報告が登場しました。
Dettoriらは、長距離自転車競技の大会に参加する463名の選手達を大会後一ヶ月間観察したところ、大会後1週間後で4.2%の参加者が、1ヶ月後で1.8%の参加者にEDの症状を認めました。
EDの症状を認めた参加者の特徴を詳しく解析した結果、ロードバイクに比べてマウンテンバイクに乗った選手でEDが多いこと、サドルの高さがハンドルバーよりも低い自転車でEDが多いこと、大会中に陰部の感覚障害を訴えた31%の参加者の中にEDが多いことが明らかになりました。
Decttori et al.J Urol. 2004 Aug;172(2):637-41. Erectile dysfunction after a long-distance cycling event: associations with bicycle characteristics.
2007年にGemeryらが発表した論文は、視覚的にも分かり易い論文でした。三次元CTという画像解析技術を用いて、ロードバイク上のCyclistの姿勢とサドルの形状によって会陰部の血管がどのように変化しているのかを観察しています。
具体的には通常のレース用のサドルと中央に陥凹のあるサドルの二種類で、肘を伸ばしてハンドルを握った姿勢と上半身を倒してエアロバーと呼ばれるハンドルに肘をついた姿勢の二つの姿勢でそれぞれ骨盤周囲の血管走行を三次元CTを用いて解析しているのです。
full forward lean with aerodynamic bars
通常の肘を伸ばしたスタイルに比べてエアロバーにもたれかかるスタイルでは恥骨結合がサドル面に密着する。 When a cyclist make a full forward lean style with aerobar |
Gemery et al. BJU Int. 2007 Jan;99(1):135-40.
Digital three-dimensional modelling of the male pelvis and bicycle seats: impact of rider position and seat design on potential penile hypoxia and erectile dysfunction.
さらに2008年にSchraderらは、全米の大都市の自転車警察官を対象にSaddle noseのないnoseless saddleを6ヶ月間試みてもらい、noseless saddle使用前後でのED、感覚障害の変化を調べました。noseless saddleにすることで会陰部の圧迫は66%軽減しています。
四角い部分が会陰部、左がnoseless saddle、右が従来のサドル。 |
個別に回答の得られた90名のほとんどは、業務に支障を来すことなくnoseless saddleに乗り、6ヶ月の後に元のサドルに戻すことを希望したのは僅かに3名でした。また、乗車中に陰部の感覚障害を一切経験しなかったと回答した割合は、従来のサドル使用時の27%から82%に増加したそうです。
青がnoseless saddle使用前、赤が使用後。一番左のNeverと答えた割合は28から82%に著増しています。 |
Cutting off the nose to save the penis.
2004年から2008年にかけてのこの三つの論文を読むと、もはやEDに及ぼす自転車の関与は疑う余地が無いように思えます。今までの報告をまとめてみますと、長距離の走行、長時間の走行、マウンテンバイクでの走行、ロードバイクであれば上半身を前傾する姿勢での走行、細い競技用のサドルが悪い影響を及ぼしている事がわかってきました。
By reading articles published by 2008, there seems to be no doubt about the correlation between cycling and erectile dysfunction. According to those articles, the risk factors are long distance rides, long time cycling, MTB, fully forward lean style with an aerobar, narrow flat saddles...
つづく
To be continued
By reading articles published by 2008, there seems to be no doubt about the correlation between cycling and erectile dysfunction. According to those articles, the risk factors are long distance rides, long time cycling, MTB, fully forward lean style with an aerobar, narrow flat saddles...
つづく
To be continued
初コメントです。興味深いデータだなと思い一気に読みました
ReplyDelete。
私の周りは革サドル愛好者が多いので、革サドルでのデータも出てくれるといいですよね。私は持っていはいないのですが、革サドル愛好家に言わせると走りこむごとに馴染むというのでその点では圧迫は軽減されているの・・・かな?
ちなみに私は純正Bromptonのサドルのままです。今のところ体調に影響はありませんが・・・。
女性の場合は婦人科系には何かしらの影響ってないのでしょうか。
おかず汁粉(http://ameblo.jp/kao-rands-hiz-4ev/)
るーちゃんさん
ReplyDeleteコメント有難うございました。
革サドルとの比較については前回の「2」でご紹介した文献に載っていました。資料写真のCがBrooks製の革サドルのようです。通常のサドルに比べると血流の低下が少なく、競技用のNarrow saddleに比べると二倍以上の酸素分圧が確保されています。もしかするとこれが「革製の使用感」につながっているのかも知れませんね。ただ、それでも正常時に比べると63%の酸素分圧の低下を来しています。
http://ichirokoga.blogspot.com/2011/05/erectile-dysfunction-due-to-cycling-ed2.html
女性に及ぼす影響についても次回「4」か「5」でご紹介しようと思っていますので、今しばらくお待ち下さい。